どうも、ハイ子です。
現在46歳です。
何を隠そう20年以上昔の1997年から1998年にかけて、中国は北京に留学しておりました。
大学2年から3年にあがる春休みに中国へ。
そして翌年1月に日本に戻ってまいりました。
今思えば、古き良き中国。
悪く言うと何かと不便な中国でした。
私が通っていた大学には単位交換制度があり、希望すれば、そして金さえ払えば、誰でも行けるシステムでした。
多分クラスの半分ぐらいが留学したと記憶しています。
クラスで仲が良かったA子もB子も一緒に留学しました。
実際、留学といっても日本の大学以上に授業がなく、自由時間が多くありました。
そして労働節だ夏休みだ国慶節だなんだかんだと結構長い休みもありました。
休みには決まって旅行に行きました。
旅行といっても大したところに泊まらなければ、大した額にもならないので、節約すればそこそこの頻度で出かけることができたのです。
日本出発前は、一緒にいろんなところに旅行行こうね!などどA子B子と約束していました。
約束というか、ノリというか、戯言というか、砂に書いた文字というか…。
…というのも、留学してすぐにA子にもB子にも彼氏ができてしまったのです。
いずれも同時期に留学していた他大学の日本人です。
もうお分かりですよね。
メジャーどころの観光地なんて、一回行けばいいじゃないですか。
ということで、ハイコが天津に行こうとか、上海に行こうと誘ったところで、帰ってくる答えはいつしか、
「ごめん、そこは彼と行く約束してるから…。」
という定型文な返事。
そうですね。
彼氏ができたら女同士の約束なんぞ、特に二十歳そこそこの年齢ならなおさら、吹けば飛ぶような鼻毛みたいなもんですよ。
ということで、いつしか、
旅行=一人旅
が鉄板になりました。
でも当時の女一人旅、しかもビジュアルは置いといて二十歳のギャル、危険なことは確かです。
さすがのハイ子も安かろう悪かろうな旅は危険だと自覚し、宿泊先はなるべく地球の歩き方に載っている、5☆は予算的にむりなので3☆ホテルは死守して旅行していました。
移動も夜行列車は別として、もっぱら朝から昼にかけて。
夜はホテルの近くだろうとウロウロしないよう心がけていました。
心がけていても、トラブルはつきもの。
否、自ら招いたというべきでしょうか…。
記念すべき第一弾の一人旅「天津」で、ハイ子は早速やらかします。
天津は北京から最も近いメジャー観光地かと思われます。
今なら高速鉄道だかで1時間弱ほどで行けると思うのですが、当時は列車で4時間ぐらいでしょうか?
でも、当時の感覚であれば十分近いです。
日本では天津甘栗のイメージが強いですが、中国では麻花と呼ばれるかりんとうが有名です。
それはさておき、初めての一人旅なのでホテルは用心して、
予算的に無理な地球の歩き方に載っている5☆
に決めていました。
まあ、一泊だけだしね。
でも、
結論から言うと、
泊まれませんでした。
留学中の移動の鉄則として、かならずパスポートとは別に「居留証」を携帯しなければならないのですが、ハイ子はそれを知りませんでした。
地球の歩き方にパスポート必須と書かれていたので、それさえあれば問題ないと思っていたのです。
地球を歩くツーリストならそれでよかったのですが、歩き回っていないハイ子はパスポートだけではだめだったのです。
居留証は後生大事に机にしまって、天津にやってきてしまいました。
午前中に列車に乗り込み、昼過ぎには天津に到着。
初海外一人旅。
ドキドキしながらも町を散策し、ん~なんだかいい感じ。
気が済むまで街を散策した後、事前に調べていた5☆のホテルへ向かいました。
もちろん予約などしていない。
フロントで、印籠を出すかの如くパスポートを提示。
たのもー。
するとフロント係はビザのページを見て眉をひそめているではないですか。
ん?なんか問題?
フロント係がパスポートを差し出して、こう言いました。
係「このビザはもう期限きれているんじゃないの?」
日付は1997年3月30日となっています。
たしかに当時1997年の4月だったので、日付だけみると過ぎているように見えます。。
しかしそうではなくこの日までに中国に入国しないと、ビザが無効になるという意味なんです。
ハイ子はしどろもどろになりながら説明しました。
するといったん係の人は奥に消えました。
しばらくして戻ってくると、今度は、
係「居留証見せてください。」
居留証?なにそれ?あの赤い小さいメモ帳みたいなのが、そんなに大事なの?
ハイ子「持ってないです。」
再び係の人は奥に引っ込みました。
そして戻ってくると、
係「ひと晩だけですよね?本当にひと晩ですね?ひと晩…ならばOKです。」
た、たたたた助かった!
こんな高いホテル連泊はできないので、もちのろん、ひと晩で十分です!
そんなこんなで、当時の中国では一般的だった(今も?)デポジットを支払って、無事ルームキーを受け取ることができました。
ああよかった。
初めての一人旅、夕べは緊張してまともに眠れなかったし、やっとゆっくりできる!
しかも5☆!
ということで、夕食は携帯してきたカップラーメンで済ませ、7時過ぎから優雅にお風呂に入り、早めに寝るつもりでした。
7時半ごろ、予定通りバスタブに湯を張って、のんびり浸かっていると、事件は起きました。
プルるるプルるる…。
5☆クラスのホテルなので、バスタブ脇に壁掛け式の電話がありました。
そのベルが鳴ったのです。
ん?こんな時間に何事じゃ。
バスタブから腕を伸ばして受話器を取る。
係「こちらフロントです。やはりお客様をお泊めすることはできません。」
はい?
いまなんと?
係「居留証をお持ちじゃないんですよね。ビザの期限もきれていますし…。」
ハイ子「え?じゃあチェックインの時に言ってよ!それにビザは切れてないっていったでしょ!…もうこんな時間だし。部屋も使ってるし、お風呂だって…。」
係「とにかく規則なので、お金はいらないので、今すぐチェックアウトしてください。すみません。」
これ以上騒ぎ立てると、警察でもなんでも呼びかねない気迫です。
しかし、ハイ子も粘ります。
ハイコ「こんな時間に追い出されても、泊まるとこないですよ。」
係「このホテルの斜め前にあるホテルなら多分大丈夫です。」
…。
万事休す。
ハイ子はあきらめて、荷物をまとめ、フロントにしげしげと向かい、デポジットを返してもらい、言われたホテルに向かうしかありませんでした。
たしかに斜め前にホテル(らしき)建物がありました。
時刻は20時過ぎ、もはや別のホテルを探す気力もなくフロントに向かいます。
チンピラみたいな柄シャツを着た強面のおっさんがたたずんでいました。
ハイ子「あの、今晩ここに泊まりたいんですけど…。」
おっさん「いいよ、パスポート見せて。」
先ほどの5☆の対応とは打って変わり写真のページとハイコの顔をちらっと見比べて、のの3秒でチェックインは済みました。
居留証の居の字もでず、ビザのページはノーチェック。
そして、独房(あくまでその時の気分というレイヤーがかかっている)のような部屋に通されたのです。
ああ、さっきまではあんなに何不自由なくリッチな気分を味わっていたのに。
なんだ、これ、昔アニメでみたぞ。
そうだ!
小公女セーラだ。
大富豪の娘から、女学校の用務員に成り下がり、ゴージャス寄宿舎から屋根裏部屋へお引越し。
私はセーラ。
小公女セーラ。
その晩は薄い壁のせいで、深夜まで廊下を行き来する足音に、不安と恐怖でほぼ眠れず。
結果二晩寝不足に。
こんな凡ミスは二度と犯すまい、そう強く心に誓ったハイ子なのでした。
無事に朝を迎え、夕べは強面チンピラに見えたおっさんは、白いランニングシャツを着て朗らかな「裸の大将」になっていました。
イッツ・天津・マジック。
おしまい
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