今回は1997年の留学中の夏休みにいった長期旅行のお話をしたいと思います。
旅=一人だったハイ子ですが、休みの間彼氏が日本に一時帰国してしまったA子と二人で出かけました。
旅のルートは、北京から貴州省の貴陽まで一気に南下し観光、そこから隣の雲南省へ移動し雲南省北部をメインに遊び倒そうという計画でした。
前半もなかなかハードな内容だったのですが、
最後の目的地、雲南省の麗江という所でハイコはとんでもない目に遭いました。
麗江へは、雲南省の省都昆明から飛行機も飛んでいましたが、予算の都合もありそうそう頻繁に飛行機には乗れないので、とりあえず体力があるうちは陸路=乗合バスを利用していました。
昆明から大理へバスで移動し、3日ほど大理観光をしてから、再びバスに乗り込み麗江へ。
さて、
麗江の見どころといえば「麗江古城」(旧市街)とそこから見える「玉龍雪山」でしょうか。
ちなみに「玉龍雪山」は標高5,500メートルを超える山で、麓に住む「ナシ族」にとってはとても神聖な山。
現在は「玉龍雪山」山頂付近の展望台(=富士山の山頂を超える高さ)までロープウェイでひょひょいのひょいですが、ハイコが旅した頃はロープウェイもなく、麓の旧市街から熱く羨望のまなざしを向けるだけでした。
しかし調べたところ、より近くで玉龍雪山を拝めるスポット「雲杉坪」ならば当時でも比較的簡単に行けるとのこと。
「雲杉坪」は原始杉に囲まれた巨大な芝生の広場です。
そこから見る玉龍雪山は結構迫力があるようで、これはぜひ行ってみたい!
ということで、ハイコと同行者の友達A子は翌日には現地の旅行会社に行き、中国人観光客に交ざって日帰りツアーに参加したのです。
途中この地域の少数民族である「ナシ族」の観光施設に行き、東巴文字(象形文字)の解説やら、
風習やら衣装なんかのお話をされた記憶があります。→かなりあいまい。
そして再びバスに乗り込み、メインである雲杉坪へ!
…と思ったら途中で降ろされました。
どうやら途中から徒歩になるみたいです。
まあ、そのほうが趣きはあるかな、ちょっとしたハイキングだね。
と、いざ歩き出そうとしたら、現地のいかにもなおばさんに声をかけられました。
うっかり話を聞こうものなら何を売りつけられるかわからない。
とっさに身構えると、おばさんの後ろにはポニーみたいなお馬さんがいます。
か、かわいい…。
どうやら、このお馬さんに跨って雲杉坪にいけるそうです。
もちろんお金はかかるけれど、想定していたより安かったと記憶しています。
乗馬の経験はないけれど、おばさんが手綱を引いて誘導してくれるとのこと。
ならばスピードもおばさんの歩くペースになるし問題ないか。
ということでA子と相談し、人生初乗馬にて雲杉坪を目指すこととなったのです。
実際馬に跨ってみると、これが意外と目線が高い。
うっかり落ちたら打ちどころによっては大けがになるぞ。
加えてハイキングコースとは別のなんだか怪しい茂みを通るのも、ビビりポイントです。
とんでもないところに連れていかれないよね。
A子と馬とおばさんA、その後ろにハイコと馬とおばさんB、という構図で進んでいきました。
すると、途中の茂みからまた違う第三のおばさんCがひょっこり現れたのです。
あろうことか、私の馬の手綱を引いていたおばさんBがそこで立ち話を始め…。
おい、仕事中だぞ!とっとと話切り上げてよ。
そうこうしているうちにA子たちの姿が茂みの向こうに消えて、見えなくなってしまいました。
それでも世間話に花がさいている様子で、そこから動かないおばさんB。
あはは!となんかウケるポイントがあったのか、その拍子におばさんB、
手綱を離した
んです。そりゃもう、ナチュラルに。
すると馬は何事もなかったかのように、ぽくぽくと歩き始めました。
おばさんなんかいなくても、いつも通ってる道なんで、問題ないっす。
とでも言いたげに、先ほどと変わらないスピードでぽくぽくと。
かなり驚いたけれど、ここで動揺すると、馬にも伝わってしまう。
ここは一心同体いや、一蓮托生。
なるべく平静を装って、馬に乗り続けました。
しばらくすると、雲杉坪に続く一本道に出ました。
道幅は5メートルぐらいでしょうか。
ああ、もうゴールは近い。
命拾いしたよ…。
と安堵したのもつかの間、背後から聞いたことのある音が。
パカラッパカラッパカラッパカラッ…。
ああ、暴れん坊将軍のオープニングで松平さんが華麗に乗りこなしている白馬の蹄の音だね。
と、のんきなことを思ったかはさておき、
騎馬民族なのかなんなのか、先頭の馬だけは人が乗っているものの、その後ろをとにかく凄い勢いで数頭の馬だけが走ってきます。
どういうこっちゃ!
おい、お前の仲間かい?
と、愛しのわがポニーに聞いたところで答えるはずもなく、
ちんたら進んでいる我々の横を、その馬たちは疾風のごとく走り抜けていきました。
なんだかとてつもなく悪い予感がします。
おいお前、お前が今その背に乗せているのは騎馬民族じゃなく、ポンコツ日本人観光客ですよ。
いや、その前に背中に人が乗っていることを忘れないでおくれよ。
とすがる思いで手綱を握りしめたが、万事休す。
ポ「みんなー!待ってー!」
と言わんばかりに、私の愛しいポニーは野生を取り戻し、
とんでもないスピードで走りだしたのです。
上下左右に揺さぶられ、経験したことのないGに辟易し、必死に手綱を握りしめていましたが、
おそらく100メートほど進んだところで、
ギブ。
ハイコはスタントマンさながら、地面に転がり落ちました。
イメージでは、コロコロコロっと転がっていったように記憶していますが、おそらく現実はもっと無様な落ちようだったことでしょう。
そして我がポニーちゃんは振り向きもせず、仲間を追いかけて行ってしまいました。
ううううう、なんだかいろんなところが痛いよう。
半べそです。
絶望感と共に地面にうずくまっていると、パカラッパカラッパカラッ…。
おい、まだ暴れん坊がいるのか?
遠くからまた数頭やってくる。
このままでは確実に、
馬に轢かれる。
這いつくばりながら、なんとか道の端っこに避難しました。
暴れん坊をやり過ごし、どうやらここにいても、暴れん坊しか来なさそうなので、
あきらめて自力で雲杉坪を目指すことに。
あ、意外と歩ける。
どこも痛くない。
幸いにも擦り傷程度で済みました。
このころには半べそからもう普通に泣いていましたね。
やっとの思いで雲杉坪に到着するとA子が駆け寄ってきました。
「大丈夫?ハイコが乗ったはずの馬だけが走ってきたんで心配してたよ。」
泣きながら事情を説明していると、先ほどの途中でいなくなったおばさんBも追いついたのか、近寄ってきました。
悪びれもせず、乗馬はどうだった?みたいな感じで。
しかし、私のただならぬ雰囲気を見て、どうやら落馬してひどい目にあったというのを、一瞬で見抜いたようです。
ハイコが怒りに満ちた目を向けて、「どうしてくれるんだ!」と訴える前に、
おばさんBはこう言い放ちました。
「そのシャカシャカしてるバッグが悪いね。」
私は当時ナイロン製のカバンを掛けていたのだが、その生地がすれる音が馬の神経を逆なでするとか、どうやらそういう理屈のようです。
それならそうと初めに言え!
というかそれ、
ゼッテー違うし!
おわり
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